組織免疫染色法

病理組織検査の基本的な染色方法は、ヘマトキシリン・エオシン (Hematoxylin-Eosin) 重染色(以下H-E染色)といい、ヘマトキシリン染色液とエオシン染色液による二重染色を行います。
しかし、 H-E 染色では染色されなかったり、 H-E 染色ではわかりづらいことがある場合に、特殊染色や免疫染色を行うことによって、特定の物質がわかりやすくなることがあります。この2者の違いは、特殊染色が化学反応によって特定の物質を染色するのに対して、免疫染色は抗原抗体反応という免疫反応を用いて染色するという違いがあります。これらはあくまでも H-E 染色による病理診断の補助的な手段であって、特殊染色や免疫染色だけで病理診断が行われることはありません。

ここでは免疫染色について説明します。
免疫染色は、抗原抗体反応という免疫反応を利用して、特定の物質を染色する方法です。細胞内や細胞表面に存在する特定のタンパク質(抗原)とそれに反応する物質(抗体)による反応を抗原抗体反応といいます。この反応は一対一対応で起こることから、「カギとカギ穴」の関係に例えられます。その抗原抗体反応を用いてある特定の物質を染色するため、その物質の有無を確認できます。さらに H-E 染色などの形態像と合わせることによって、組織におけるその物質の局在性がわかります。したがって、 H-E 染色の組織像と併せて判断します。

例えば、上皮細胞で陽性となるものがあれば、筋肉の細胞に陽性となるものもあれば、リンパ球に陽性となるものもあります。間葉系細胞に陽性になるものがあれば、神経系細胞に陽性となるものもあります。これらの免疫染色は、細胞の分化傾向を確認するのに役に立ちます。また各種のホルモンに反応するものがあれば、肝炎ウイルスやサイトメガロウイルスなど特定のウイルスに反応となるものもあります。免疫染色はたくさんの種類があり、現在も新しい抗体が開発されています。

免疫染色を行うタイミングは、 H-E 染色と同時に行う場合と、 H-E 染色での鏡検後に追加で行われる場合があります。検索の目的に合った抗体を選択して施行しますが、抗体の感受性および特異性は100%ではないため、多くの場合複数の抗体を組み合わせて判断します。また組織像と併せて判断することが大事です。

<代表的な免疫染色>

上皮系    : 各種サイトケラチン
間葉系    : ビメンチン
筋系     : 平滑筋アクチン、デスミン、ミオグロビン
神経系    : S-100、GFAP、ニューロフィラメント
神経内分泌系 : シナプトフィジン、クロモグラニン
細胞増殖能  : ki-67、p53
ホルモン   : 各種ホルモン
病原体    : 肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘリコバクターピロリ、

(これ以外にも沢山の種類があります。)

染色する方法は、手動で染色する場合と、自動免疫染色装置を使用する場合があります。

自動免染装置

自動免染染色装置

 

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